タイラー・コーエン 「誘拐犯との交渉に人質を関わらせるなかれ」(2019年4月12日)/「私を誘拐したのは誰なのか? 私を誘拐したのはなぜなのか?」(2018年5月24日)

「誘拐ビジネス」がテーマになっている書籍を2冊紹介しておこう。
画像の出典:https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=2118627

当時史上最高額の身代金が支払われた誘拐事件の一つ――1974年にアルゼンチンで起きたボルン兄弟誘拐事件。6000万ドルの身代金が支払われて、1975年に釈放――では、人質のうちの一人が交渉人を務めた。ジョージ・ボルン(Jorge Born)が誘拐犯グループ(モントネーロス)と直接交渉したのである。ジョージはブンヘ・イ・ボルン社の大株主であったこともあり、ブンヘ・イ・ボルン社からどのくらいの額のお金(身代金)を巻き上げられるかを知り尽くしていた。しかしながら、誘拐犯グループがジョージの提案を受け入れるまでに7カ月かかった。搾(しぼ)り取れる目一杯の額をジョージが提示しているのか決めかねたからである。ジョージと誘拐犯グループの間で折り合いがつくと、ボルン兄弟の父親のもとにメモが届いた。身代金の要求額が書かれたメモである。誘拐犯グループの署名だけでなく自分の息子の署名も入っているそのメモを見た父親は、メモに書かれている通りの金額を支払うしかないと感じたのだった。こんな結果にならないようにするためにも、交渉人たちは並行交渉を極力避けて、人質による余計な干渉を必死に退(しりぞ)けようとするのだ。人質が落胆することがあるのも致し方ないのだ。

アーニャ・ショートランド(Anja Shortland)の興味深い一冊である 『Kidnap:Inside the Ransom Business』(『誘拐ビジネスの内幕』) からの引用だ。

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私なりの言い方をすると「トレード(取引)」が本書のテーマである。言い換えると、国境をまたいで繰り広げられる「政治目的での誘拐」という名の右肩上がりの国際ビジネスがテーマである。米財務省によると、非合法組織にとって(国家による支援を別にすると)最も儲かるビジネスがテーマである。とは言え、お金のことだけがテーマかというと、そうじゃない。本書は、私なりの奮闘記録でもある。9年間にわたって私の脳裏から離れずにいた二つの問い――「私を誘拐したのは誰なのか?」/「私を誘拐したのはなぜなのか?」――に私なりに答えを見つけ出すというのもテーマになっているのだ。

ジェレ・ヴァン・ダイク(Jere Van Dyk)の『The Trade:My Journey into the Labyrinth of Political Kidnapping』(『トレード:政治目的の誘拐という名の迷路の探索記』)からの引用だ。

ところで、どういう「均衡」に落ち着いてるんだろうね? 身代金をせしめるために誘拐がもっと増えてもよさそうなのに、そうならないのはどうしてなんだろうね?


〔原文:“Coasean kidnappings and the bargaining range”(Marginal Revolution, April 12, 2019)/“The Trade”(Marginal Revolution, May 24, 2018)〕

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