2010年代に,こんな説がよく語られた.「アメリカでは経済成長は失速してしまった.そのせいでミレニアル世代は酷い目にあってる.」 いまでも,ごく一部の進歩派はこう論じてるけれど,データが揃ってくるにつれてこの物語は全体的に引っ込んで影を潜めてきてる.ミレニアル世代がだんだん中年になってきて,これまでの世代がみんなそうだったように,彼らも大幅な経済進歩を経験している.この物語の変化についてぼくが最初に取り上げたのは2023年のことだ.
ただ,ちょっとばかり出遅れてしまった――「世代停滞」説については,ジェレミー・ホープダールのようなブロガーたちがすでに何年も反論していたからだ.
ともあれ,データが増えてきて,ミレニアル世代の伸びはいっそうはっきりしてる.タイラー・コーエンが注目している Corinth & Larrimore (2026) の研究では,各世代の課税・所得移転後の所得を検討している.その研究結果の大筋は,1枚のグラフに見てとれる.お節介だけどグラフにラベルを書き足しておいた:

これは所得分布を示している――つまり,それぞれが同じ年頃だったときに,各世代でどの所得水準にどれくらいの人たちがいたのかを示している.数字はインフレ調整済みだ(つまり,生活費の変化を調整してある).ここに見てとれることをまとめると:
- ミレニアル世代のうち,36歳~40歳の時点で所得が3万ドル未満の割合は,他のどの世代よりもずっと少ない.(所得は2019年のドルに揃えてある)
- 所得が4万ドル以上にのぼるミレニアル世代は,他のどの世代よりも多い.そして,4万ドル以上では,どの所得水準でもミレニアル世代が群を抜いて多い.
- 14万ドル以上の所得になると観察が難しいので,グラフからは省かれている.
- どうも,所得がきっかりゼロのミレニアル世代は他の世代よりも多いようだ.ここには,まだ親に生活を支えてもらってる人たちが反映されているのかもしれないし,あるいは,データ収集プロセスの穴からなぜかこぼれてしまった人たちが反映されているのかもしれない.
- ミレニアル世代の所得分布は他の世代よりも上から下までの範囲が広い――全体としてミレニアル世代が他の世代よりうまくやってるために,他の世代よりも伸びが大きくなった結果,ミレニアル世代内の格差が拡大している.
以上は,これまでぼくらが年を重ねつつ見てきた現実の記述としてかなり妥当だ――大半のミレニアル世代は,親たちが同年代だったときよりも余裕がある.ちょうど,ベビーブーマー世代がその親たちよりも余裕があったのと同じだ.
だからって,政府による再分配がいらないって話にはならない――というか,Corinth & Larrimore の論文では,はっきり明示して,再分配後の所得が計算されている.そして,アメリカはいっそう再分配を強めている.だから,政府の再分配によって貧しい人たちが所得階層を登りやすくなってるわけだ.これは大きな政府の成功譚だね.
ただ,「ミレニアル世代は親世代より落伍している」とか「ベビーブーマー世代のせいでその子どもたちは酷い目にあってる」という物語は,所得データと照らし合わせると,崩れ落ちてしまう.
[Noah Smith, “Millennials are doing better than Boomers (but are more unequal),” Noahpinion, July 1, 2026]