タイラー・コーエン 「予測不能の時代」(2022年10月23日)

今や「予測不能の時代」に突入しつつある。
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/26258115

外交政策の帰結を予測するのは、経済政策の帰結を予測するよりもずっと難しい。「何も起こらない」なんてことがあり得ない混沌期においては、とりわけそうだ。予測を立てるために頼れるような筋の通ったモデルなんてどこを探してもないし、データの中から因果関係を識別する手立てもない。そもそも利用できるデータの質に問題があって、何もかもがごちゃ混ぜになっているのだ。

目下の状況に目を向けると、ウクライナ情勢(ロシア・ウクライナ戦争)がどういうかたちで終局を迎えそうかを予測するのは非常に難しい。ロシアのプーチン大統領が戦術核兵器の使用も含めたあれやこれやのエスカレーションに訴えた場合に、長期的にいかなる帰結が招かれそうかを予測するのも同じく非常に難しい。

中国と台湾の緊張関係の行く末を予測するのも非常に難しいし、台湾有事の場合にアメリカがどういう対応に出そうかを予測するのも非常に難しい。中国が今すぐにも台湾侵攻に踏み出したとしても、アメリカがどんな対応に出そうかが相変わらず読めないままの状況がしばらく続くだろう。

バイデン政権による半導体の対中輸出規制を踏まえると、アメリカは世界の中でも屈指の破壊力を備えている二つの国と同時に非公式に(密かに)交戦しているようなものだと語るのは馬鹿げているとは思わない。

数あるワイルドカード(その成り行きを予測するのが難しくて、場合によっては大きなインパクトを及ぼす可能性がある事象)の中でも無視されがちなのは、イランとイスラエルの衝突だろう。超大国が絡む戦争は、中東のどこかしらにも飛び火しがちなのだ。

AI(人工知能)が将来的に人類に対して差し引きしてどういう効果を及ぼしそうかを予測するのもこれまた非常に難しい。そのことを認識するためには、「スカイネットの稼働」にびくつくまでもないだろう。

いわゆるUAP(未確認異常現象)についてどう考えるかは人それぞれだろうが、UAPを目撃したという報告は今後も絶えないだろうし、目撃者があしらわれることもないだろう。センサーで捉えられたのは「単なるガチョウの群れ」とは決めつけられない。UAPの正体が地球外から来た飛行物体ではないとしたら、アメリカ軍が発明した新兵器というのが最もあり得そうな答えだ。仮にそうだとしても大きなニュースであることに変わりはないだろうし、不確実性を高める方向に働くことになるだろう。アメリカ軍が原子爆弾を初めて投下した時に世界中に及ぼしたショックの大きさがいかほどのものだったかを想像してみるといい。

ところで、明るい面に目を向けると、コロナ、マラリア、デング熱(+いくつかの癌?)の(感染や重症化の)予防にかなり効き目のあるワクチンがどうにかこうにか開発されるに至っているようだ。こちらの方面に関しても、どうなりそうかを予測するのがつい最近まで難しかったのだ。

すなわち、今や「予測不能の時代」に突入しつつあるのだ。この新時代に 「備える」というのが一体何を意味するのかは正直なところよくわからないが、安上がりな趣味に浸るのも一つの手かもしれない。安上がりな趣味というのは、いつの時代でも過少評価されてしまっているのだ。


〔原文:“The Age of Unpredictability”(Marginal Revolution, October 23, 2022)〕

Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts