米中間、およびEU・中国間の最近の貿易交渉は、どちらの側が貿易紛争で「勝っている」のかという憶測を定期的に引き起こしている。しかし、こうした見方は、両者の相対的な立場についての混同された理解に基づいている。各交渉の場において、双方は比較可能な形態の交渉力を持っておらず、それぞれの「成功」も直接比較できるものではない。
中国は、アメリカとヨーロッパへの財の供給を制約する能力では、アメリカとヨーロッパをはるかに上回っている。これには、工業製品、レアアースや重要鉱物、医薬品原料、および世界的なサプライチェーンにおいて依然として中国に高度に集中しているその他の財、などである。それに対して、アメリカとヨーロッパは、国内市場の相対的な大きさのゆえに、中国製品の需要を制約する能力では中国を上回っている。
これら(中国と欧米の交渉力)はまったく異なる形態の交渉力である。〔中国が行う欧米への〕供給の制約は、制約を課される〔欧米〕側に直ちに最大のコストを課す傾向がある。〔欧米が行う中国への〕需要の制約は、短期的には制約を課される〔中国〕側が相殺において〔供給の制約に比べて〕より容易だが、制約が持続するにつれて管理がますます困難になる。だからこそ私は、短期的には中国政府がより強い立場にあり、中期的にはアメリカ政府とEU政府がより強い立場にあると主張するのである。
- 〔中国が行う〕供給の制約は、短期的には〔欧米にとって〕苦痛だが、中期的には〔欧米〕経済を拡張させる方向に働きうる。もし〔欧米〕経済が輸入品や重要な投入財へのアクセスを突如失えば、すぐに代わるものがないかもしれない。たとえあったとしても、供給源を〔中国から〕切り替えることは摩擦コストを生む。価格が上昇し、生産が混乱し、実質消費が落ち込む。〔中国が〕供給を制約する製品を慎重に選べば、輸出側〔中国〕にとっての直接的な経済コストは比較的小さく抑えられる一方、輸入側〔欧米〕のコストは混乱を引き起こすほどのものになりうるのである。
しかし中期的には、〔中国による〕供給制約の効果は変化しうる。〔供給制約による〕価格上昇と〔中国からの〕供給の不安定化の高まりは、〔欧米の〕国内生産と〔中国に〕代わる海外供給国の相対的な収益性を高める。〔欧米の〕企業や政府は、代替能力への投資と、以前は輸入に依存していた産業への資源の再配分によって対応する。したがって、〔中国による〕供給ショックとして始まったものは、〔欧米での〕国内投資、雇用、生産の増大を生み出しうる。言い換えれば、時間が経つにつれて、短期的には消費にとって収縮的なものの一部が、生産能力の拡大に寄与し、最終的には賃金の上昇と消費の拡大の両方につながりうるのである。鍵となるのは、〔中国による〕供給制約が、〔欧米〕国内であれ、貿易が概ね均衡している貿易相手国との間であれ、生産を刺激するかどうかである。 - 〔欧米による中国製品への〕需要の制約は、短期的には財政拡張によって克服できるが、中期的には収縮的である。〔中国の〕輸出市場へのアクセスが制限されると、〔中国の〕黒字経済への直接的な影響は、国内生産に対する需要を減少させることである。短期的には、〔中国〕政府は、財政・準財政の拡張(公共支出の増加、投資支援、生産者への直接補助金、信用の拡大など)を通じて、結果として生じる収縮の一部を相殺することができる。たとえば、2007~2009年の世界金融危機がGDPの7パーセントポイントに相当する純外部需要の収縮をもたらした後、中国が行ったのはまさにこれである。中国政府は、4兆元の投資プログラムや銀行融資の異例の拡大を含む、大規模な財政・信用刺激策で対応した。2009年だけで新規銀行融資はGDPの約31パーセントに達した。その対応は、世界的な貿易の崩壊と外部需要の急激な収縮にもかかわらず、2009年から2011年までGDP成長率を10パーセント弱で維持するのに十分であった
しかし、この対応の効果が低下していることは、2009年の時点ですでに中国にとって問題になり始めていた。17年後の現在では、それははるかに大きな問題となっている。総債務は、2009年末にはGDPのほぼ170%だったが、今日ではほぼ320%である。経済が比較的資本希少で、生産的な投資機会が豊富なときには、財政・信用の拡張は将来の産出の大幅かつ持続可能な増加を生み出すことができる。しかし、経済がすでに多額の投資を抱え、過剰能力に苦しんでいる場合には、追加の投資は、産出の経済的価値が相応に増えることもなく、さらなる債務を生み出すだけとなる。
これこそが、2つの形態の交渉力の中心的な違いである。中国による〔欧米への〕供給の削減は、アメリカとヨーロッパの消費者や企業のコストを直ちに引き上げる。米国と欧州による〔中国への〕需要削減は、当初は中国に追加の財政・信用拡張による埋め合わせを強いる。どちらの側も相手に無視できないコストを課すことができるが、それぞれの交渉力は異なる時間軸で作用する。中国は比較的迅速にアメリカとヨーロッパの供給を混乱させることができる。アメリカとヨーロッパは、〔中国が〕短期的には〔財政・信用拡張で〕相殺できるが、長引くにつれて管理が次第に難しくなるような形で、中国の生産を混乱させることができる。
したがって、一時的な合意は当面のコストを削減し、双方にとって経済的に価値があるかもしれないが、根本的な問題を取り除くものではない。中国が国内需要で吸収できるよりはるかに多くを生産し続け、しかもアメリカとヨーロッパが、その中国の過剰生産の際限なく拡大する割合を受け入れようとしない限り、双方は供給の制限、需要の制限、またはその2つの組み合わせを通じて互いに対立し続けるだろう。
したがって問題は、どちらの側がより大きな交渉力を持っているかではなく、むしろ調整プロセスが進展するにつれてどちらの側がその交渉力を維持できるか、つまり、アメリカとヨーロッパが、中国が債務負担の加速に耐えられるよりも長く、物価上昇と供給の混乱に耐えられるかどうかなのである。
[Michael Pettis, “Trade leverage between the major economies involves very different kinds of disruption” Oct 21, 2026]
〔訳注:タイトル直訳:「主要経済国間の貿易上の交渉力は、まったく異なる種類の混乱をともなう」〕