タイラー・コーエン 「テストステロンの経済学」(2007年7月5日)/「マッチョな男性をなだめすかす術 ~テストステロンにはビキニ姿の女性を!~」(2006年4月21日)

●Tyler Cowen, “Testosterone economics”(Marginal Revolution, July 5, 2007)


まずは、最後通牒ゲーム(ultimatum game)の復習をしておこう。

最後通牒ゲームでは、2人のプレイヤーの間で一定額のお金が分け合われることになる。一方のプレイヤー(プレイヤーA)がお互いの取り分を提案し、もう一方のプレイヤー(プレイヤーB)はその提案を受け入れるかどうかを判断する。プレイヤーBがプレイヤーAの提案を受け入れたら、その提案通りに両者の間でお金が分け合われる。その一方で、プレイヤーBがプレイヤーAの提案を撥(は)ねつけたら、どちらも何も得られない。標準的な経済学から予測されるところ [1] … Continue readingとは異なり、プレイヤーAがケチくさい提案をすると――例えば、総額の4分の1を下回る金額をプレイヤーBの取り分として提示すると――、その提案はプレイヤーBに撥ねつけられる可能性が高いことがこれまでに行われた実験で何度も確かめられている。

それでは、つい最近実施された最後通牒ゲームの実験結果を以下に紹介しておこう。

低額の提案を撥ねつけたプレイヤーは、それと同額の提案を受け入れたプレイヤーと比べると、テストステロンの値が平均で50%以上高かった。テストステロンの値が最も高かった男性7名のうち5名は低額の提案――「あなたの取り分は、40ドルのうち5ドルでいかがでしょう?」との提案――を撥ねつけたが、それ以外の男性19名のうちで同じ提案を撥ねつけたのはわずか1名だけだった。

言い換えると、ヒトが合理的と言えない振る舞いをするのは不完全な存在だからってだけじゃないのだ。ヒトは、(テストステロンの作用を通じて)執念深く振る舞うようにプログラムされているのだ。テストステロンの値の高さが旺盛な競争心だったり支配欲の強さだったりとどう関係しているのかについては、こちらを参照されたい。

こちらの論文では、女性を対象として、テストステロンの値と服装の選択との関係が調査されているが、薄着の女性は〔テストステロンの値が高く、それゆえ、〕執念深い可能性が高い・・・なんていうのは少々大胆な推測だろうか? 同じプロジェクトで一緒に仕事をするなら、華奢な男性か、フラットシューズを好んで履く女性――テストステロンの値が低い人物――をメンバーに迎え入れるべきなんだろうか? 束の間のホットな関係に浸るよりも長期的な協調関係を築きたいと願うのであれば、ホットではない相手――テストステロンの値が低い人物――を恋人や伴侶に選ぶべきなんだろうか?

情報を寄せてくれたDaniel Akstに感謝。

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●Tyler Cowen, “How to get a macho guy to give in”(Marginal Revolution, April 21, 2006)


ベルギーにあるルーヴェン・カトリック大学に籍を置く研究チームは、最後通牒ゲームの実験を行うために、男性に声をかけて回った。最後通牒ゲームでは2人のプレイヤーの間で一定額のお金が分け合われることになるが、テストステロンの値が高い男性たちは、非常に厳しい態度で交渉に臨む傾向にあった [2] 訳注;低額の取り分を提案されると、その提案を撥ねつけたという意味。しかしながら、それはビキニ姿の女性の写真を目にするまでの話だ。ビキニ姿の女性の写真を目にした後では、テストステロンの値が高い男性たちは、ケチくさい提案であっても受け入れる可能性が高かったのである。

その一方で、テストステロンの値が低い男性たちは、セクシーな女性の写真を目にした後でも、交渉態度をそれほど変えなかったという。

実験結果の詳細については、こちらを参照されたい。

全文はこちら。リンク先の写真は、職場のパソコンで閲覧しても(シャレでも何でもなく)ギリギリセーフだろう。

References

References
1 訳注;「どんなに少額であっても、何も得られないよりはまし。それゆえ、プレイヤーAの提案がどんなにケチくさくても――例えば、10ドル中1セントだけをプレイヤーBの取り分(残りの9ドル99セントはプレイヤーAの取り分)とするような提案であっても――、プレイヤーBはその提案を受け入れるはず」との予測
2 訳注;低額の取り分を提案されると、その提案を撥ねつけたという意味
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