マーク・ソーマ 「『ポール・クルーグマン: 夢にまで見た空飛ぶ車と同じくらい、祝福すべき事が在る』」 (2015年12月25日)

Mark Thoma, “Paul Krugman: Things to Celebrate, Like Dreams of Flying Cars“, (Economist’s View, Friday, December 25, 2015)


メリークリスマス!:

夢にまで見た空飛ぶ車と同じくらい、祝福すべき事が在る: ポール・クルーグマンの論考 (ニューヨークタイムズ): … 銀河帝国は別にしても、スペースコロニーや無重力ホテルでさえまだまだずっと先の話だ。しかし宇宙テクノロジーは、数十年の停滞期を経たいま、日々躍進をみせている。

素人の私から見ると、こういった事態は或るより大きな潮流の一端を成しているように思えるのだ。そしてこの大きな潮流というのが在るおかげで、私はここ暫く考えていたより未来に希望を抱けるようになっている。

既にお気付きの方もいるだろうが、私が博士号を取ったのは1977年、つまり映画スター・ウォーズ第一作が公開された年であった。要するに私は自らの職業生活全体をテクノロジーに対する失望の時代に過ごしてきたのである。

1970年代になるまでは、テクノロジーの進展はそれが過去に為したことを再び為すだろうと、ほとんどの人が信じていた: 生活のあらゆる場面に、急激かつ見間違いようもない向上をもたらしてくれるだろうと。しかしそうはならなかった。…

いまや情報を処理し伝達する我々の能力は格段の進歩を遂げた。しかし私も猫やコンサートの動画を愛すること余人に劣らぬつもりだが、我々の話題はなお生活のほんの一場面に限られている。…

しかし最近の5、6年の間に、- つまり、少なくとも私にはそう思えるということだが – テクノロジーの進展が再び肌身に感じられるようになってきた。今ひとたび我々は、情報の世界に留まらず、物質の世界における進歩を経験しているのだ。そしてこれは重要なことである。

ロケット技術の進歩は見ているだけでも面白い。しかし本当のビッグニュースはエネルギーに関するもの – そう、ごく最近まで全く失望ばかりであった分野だ。…これまでに現れてきた最大の影響はフラッキング技術に由来するもので、同技術のおかげで 『石油ピーク』 の恐怖を終わらせることが出来ただけでなく、上手に規制してゆけば、もしかしたら気候変動問題解決の為の一助となってくれるかもしれないのだ。というのもフラッキング技術で得られるガスもまた化石燃料ではあるが、燃焼の際に発生する温室効果ガス排出量は、石炭に比べ遙かに少ないのである。だが、さらなる未来の革命は再生可能エネルギーの分野に在りと言わねばならない。風力、また特に太陽光発電のコストの減少は俄かには信じ難い速度で進んでいる。

こういった事態は何故重要なのか?…ご存じの通り、大抵右翼勢力からだが左翼勢力の一部からも、経済成長を諦めない限り、我々は気候問題に対し効果的に対応し得ないのだという主張をいまだに聞かされるのである。…

しかしいまや我々は持続可能・低排出な未来の姿をかなり具体的に知ることができる…勿論、必ずそうなると決まっている訳ではない。けれども、そうならなかったときの問題は政治の側であって、テクノロジーの方ではないだろう。

その通り。私はいまも空飛ぶ車の到来を待ち焦がれている。ハイパードライブ? 言わずもがなである。だが我々は物質テクノロジーにおいて既に十分な進歩を遂げたのだ。そのおかげで世界を破滅から救おうとする試みも、突如としてずっと現実味を帯びてきた。これが祝福すべきことでなくて何であろうか。

 

 

 

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